レポートTOP


2007年カリフォルニアへの旅(序章)★


旅は不思議だ。年齢、経験とともに、同じ場所へ行くにしても毎回捉え方が変化する。客観的に、自分の姿さえも上空から冷静に見つめているような感覚もある。当たり前のことだが、若さゆえのエキサイトはもうあり得ない。よりシンプルに、行くべきところ、見るべきもの、すべきこと、会うべき人を心得ていて、身軽でピュアな行動ができるようになる。そしてそれは、とても喜ぶべきことである。 
10年近く展示会をかねた旅を続けてきて、国籍を超えてたくさんの人々と接することができ、多くのインスピレーションをもらい続けている。沖縄という地の文化風土歴史を、私なりに紹介することも心がけてきた。アートにたずさわる1人の人間としてできる最大限の活動を、展示会の旅を通してこれからも続けて行くことをライフワークにすると同時に、より魂の赴くまま、都会から郊外へ、そしてまた別の世界へと足を伸ばしていきたいと考えている。旅慣れた分、より豊かにくつろいで。

さて今回は、初めてのアメリカ西海岸の旅である。ISAP(International Society of Acrylic Painters)という、英国と米国カリフォルニア・フロリダを拠点とし、30年近い歴史をもつプロのアクリル作家協会の国際公募展に入選したのがきっかけである。4カ国・280作の応募中、80点近くが入選。日本人は私のみ。
1ヶ月以上に及ぶ展示会の会場はSan Luis Obispo Art Centerといい、ロサンジェルスとサンフランシスコの中間、海辺とワイナリーとアートの町サンルイオビスポ市の品の良いダウンタウンにある。
サンルイオビスポは米国で最も古いmission(宣教の中心地)のひとつとして知られ、古い教会を中心とした歴史ある町である。一方で全米屈指の工科大学Cal Polyを抱える学術の町でもあり、いわゆる知識層や専門職(医師・弁護士)の事務所が軒を連ねる通りもある。ダウンタウンには上質なアートギャラリーやカフェ、レストランやアンティークショップが多く、20年代アメリカ・アールデコ様式のレトロな映画館などもあり、低層建築のパステル調の彩りが目に心地良い綺麗な町並みである。
郊外では、アザラシの憩う海辺や有名なシカモア温泉などが観光客を魅了している。また、最もすばらしいのは(私的に)、広大なぶどう畑の広がるワイナリー。ナパバレーなどと並び、サンルイオビスポはカリフォルニアワインの一大産地である。
豊かな土地柄に魅了され、気候の良いカリフォルニアでも人の“住みたい町”として挙げられるのもうなずける。同じ理由で、サンルイオビスポにスタジオやギャラリーをもつアーティストも多い。

魅惑のカリフォルニア・セントラルコーストでアートギャラリーとワイン三昧。そして、帰り2日ほどはサンフランシスコへ寄り、美術館三昧と洒落てみた。


       
   
↓次ページ