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4.EAST VILLAGE USA

80年代半ばのニューヨークといえば、治安が悪く、クレイジーな街という印象がぬぐえない。そんな時代に、よりにもよって新婚旅行でマンハッタンを歩き回った私とダンナもやっぱりクレイジーというほかないが、混沌とした危なさがまたスリリングな醍醐味でもあった。
イーストビレッジを中心としたアーティストの活躍が、当時はずいぶん脚光を浴びていた。キースへリング、バスキア、シャーフといった、グラフィティアート出身の連中がいきなりスターになるという、アート界のマジックのような現象が、一種のバブル期のように起きていた時代である。

そんなイーストビレッジのアートを回顧した初の展覧会"EAST VILLAGE USA"が、2005年3月19日までチェルシーのNew Museumで開催中だ。
見逃す手はないと、息子とともに覗いてきた。
2006年オープン予定の新館ができるまでの仮スペースということで広大というわけにはいかないが、180点余りの絵画・彫刻・写真・ビデオとかなり見応えある大展示会であった。
作品の、そもそもの材質が良くなかったり、保存状況が悪いもの(また保存しようのない落書きなど)と色々あって、集めるのは大変だったという記事も何かで読んだ。
メジャーになった作家以外にも、随分多くのハードコアな作家がうごめいていたのがその時代で、展示作家は70名に上るという。
一方でまた、その多くがエイズやドラッグで亡くなっているというのも時代の特徴だろう。
作品は、どれも洗練とは程遠いけれど、アンダーグラウンドの薄暗いエネルギーや、パンチの効いた叫びに充ちている。どれも「こうしか描きようがなかった」といったような、貧困や犯罪など作者を取巻く環境あればこその副産物である。かつてのCBGBクラブのライブで流れる曲とともに、それらダーティ・ペインティングが今発するものは"ノスタルジー"なのかもしれない。

息子はキースへリングの巨大ペインティングをしげしげと眺めている。彼のいつも着ているTシャツの柄なのである。
思春期の、特に男の子には、イーストビレッジ・アーティスト達のやり場のない巨大なエネルギーというものがかなり理解できるはずだ。クラウス・ノミのビデオ映像や、当時毎晩のようにクラブやライブハウスで行われていたアートパフォーマンスの記録に興味津々で見入っていた。

ちなみに現在のイーストビレッジは、日本人も多く住む、安全で清潔な街である。



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