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6.ホームパーティ、ピクニックランチョン、そしてラーメン屋さん
NY滞在最後の晩に、友人がホームパーティを開いてくれた。 朝から買出しと料理にとりかかる友人の手伝いを申し出たけれど、親切な彼はたっぷり街を楽しんでいらっしゃいと私と娘を遊ばせてくれた。 最後の日となればやはり、沖縄へ持ち帰る品々の物色しかない。まずは一昨年友人と行って狂喜したグルメショップ・14丁目のTRADER JOE’Sへ。 例によって菓子類から乾物までたっぷりと買い、あまりの重さに2人して一旦アパートへ戻る。そういえば、渡米したら必ず買うことにしている100年以上の歴史を誇るスパイス・Bell’s Seasoningが見つからないない。友人のパートナーがgoogleしてくれて、置いていそうな店を近くで一緒に探してくれた。アパートにほど近い大きめのスーパーで無事発見。8個ほどあった在庫をすべて買い占めた。能書きによると七面鳥の詰め物の香り付けによく使われるようだけど、我が家では主に牛肉を焼くときに使っている。なんだか古典的なアメリカっぽい香りではある。 外国に行って楽しいことのひとつが、この「スーパーマーケットめぐり」だ。見たこともない食材や、種類の多い野菜や果物、乳製品や肉類、パンの種類も民族ごとにあるから大変なバラエティだ。 さてその夜、一昨年お会いした懐かしい友人CさんとYさんが加わって、賑やかに美味しい宴が繰り広げられた。インテリアといい食器類といい音楽といい、最高の料理をひきたててゴージャスなムードを創りあげる家主のセンスはさすが。NYの友人達はたまにしか会えない分、よりいっそう親しみが増すもの。もっとおしゃべりしたいと後ろ髪を引かれながらあっという間に時間が過ぎた。 長年NYで仕事しながらダンスクラスに所属するCさん、メトロポリタン美術館で専門職につくYさんともにいつお会いしても輝いていてとても刺激になる。 こうした方々との出会いがあるから、NYは行く度に愛着が増していく場所である。絵を描いてきてよかったと、こういう場面でも心から思う。 娘にとってはさらに、立派な大人達に接することができるのは何よりの社会勉強であり、親としても周りに感謝するばかり。 それにしても、友人は日本や沖縄の食材を私などよりはるかに上手に食卓に取り入れていると関心する。鰹節やしいたけも良く使うし、ある日のメニューではゴーヤーチャンプルーやふーチャンプルーをこともなげに作ってくれた。冷たいお茶も、丁寧に煮出したものだった。 数日前に、友人とイーストビレッジに新しくオープンしたラーメン店に出かけた。元来外で頂くアメリカ料理は分量が多めでオイリー、大味なものが主流だったけれど、NYではエスニックごとに洗練されたレストランがたくさんあるのでこだわりの食事を楽しめる。「一風堂」というその博多ラーメン店は、炉辺焼きをメニューに組み入れ日本酒もかなりの種類を揃えている。白木を彫った平仮名のインテリアや様々なドンブリのディスプレーが面白い。店は早くも流行っているらしく、入り口のバーではオープン記念品のうちわをパタパタさせながら順番を待つお客で一杯だった。 ラーメンの味もデザートも美味しく、冷えたエビスビールも嬉しかった。 感じの良いホールスタッフが言うには、厨房まで日本人のスタッフにこだわっているのだそう。 NYでは寿司屋に入れば経営者は韓国人で板前は南米人、というのも珍しくない現実がある中、これはかなり気合いの入った経営方針だと思う。 何の分野につけこの「こだわり」を貫くというのが本物への道かもしれないと、細めで腰のある麺をすすりながら、つくづく考えさせられた。 マンハッタン近郊のニュージャージーにはミツワなどの大きな日本食品店があるけれど、友人によるとそこまで行かなくても大抵の和食材はチャイナタウンで揃うという。また、ハーレムには日本の品物を扱う小さなスーパーマーケットがあった。野菜や魚、肉、米や日用品は見慣れたものばかりで、冷蔵庫にはお馴染みパッケージのペットボトルがずらりと並んでいる。 とにかく日本の食材はかなりインターナショナルなので、どこでも不自由しない様子。Cook bookを見ても、しいたけはshiitaki、大根はdaikonと英語で読まれている。 帰国当日の午後は、展示会オープニングにもご家族を連れて寄って下さったNJ在住のMillerさんが私達を車で空港まで送って下さり、なんと近くの公園でピクニックランチをして下さった。野菜たっぷりのピザや生姜の入ったジュース、しいたけと豆のピラフとすべて手作りで、空港の待ち時間用にも果物と小さなお弁当を持たせて下さった。 毎回ながら、NYへ行くとこうした「心のある暮らし」とでも言うべきか、出会う人々の細やかな生き方に感動する。衣食住そして職を、ごまかすことなくまた他人に流されることもなく、見事に充実させている人は、世界中どこにいても本当に強いのだと思う。 社会をゆるがす食品偽装問題で食に関する見直しが叫ばれるまでもなく、私も今一度身の回りから考え、いかに材料を揃え料理をしていくか、工夫していきたいと思う。家庭菜園にも興味があるけれど、これは今のところ口先だけ。 それにつけても食べることは楽しい。人が集まりお喋りとアートや音楽、美味しい食事とお酒があれば、それ以上に何が要るだろう。しっかり仕事して、手間ひまをかけてじっくりと人生を味わいたいと思う。 |