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2.やっぱりChelsea画廊街


アートマップChelseartによると、チェルシーの画廊数は現在269軒。その他ミッドタウンやソーホー、トライベッカ、ローワーやアッパーエリア、ブルックリンまで数えると大変な数に上る。それぞれが毎月個展やグループ展を開く。アーティストの数も相当だけれど、展示することができ、さらに売れる幸運はごく限られる。画廊にしても、すぐに潰れてしまうところも当然ある。
しかし、上がる一方のrentを支払い人を雇って長年経営している画廊には、マジックのような、何か夢のようなからくりを感じさせる。どうしてもそのゴージャスな世界の引力に抗えず力試しをしたいと世界中からアーティストがやってくる。私もその一人で、細々とながら毎年グループ展に出して今年で9年になる。コンペティションで賞を頂いたり、作品が売れるときもあるけれど、経費を考えたらやはりお楽しみというかあくまで自己研鑽の機会である。しかしオープニングに合わせて渡米するたびに得るものが大きく、知人も増え、愛着は増していくからやめられない。NYのアートシーンには、常に魅力と魔力が連綿と、さんぜんと煌いているのである。

さて、毎度おなじみ27th.St.のCeres GalleryとA.I.R.Galleryのグループ展に、今年もそれぞれアクリル画と墨絵を出品した。例のごとく賑やかなCeresのオープニングレセプションでは娘にカメラマンをたのみたくさんのお客様と心地良い時間を過ごさせてもらった。
昨年、作品の遅配で面倒をかけてしまった新しいディレクターのStefanyとご対面。その年は、私はカリフォルニアの展示会に参加したため作品だけの送付になったのだった。明るく親切な彼女は、私の作品を今回もとても良いところに飾ってくれていた。「来年もぜひ貴女の作品を展示させてね!」と言ってくれる。私もぜひ、そうしたい。
ところで今回初めてFedEXのアカウントを取得しての発送をしてみた。以前は郵便のEMS一辺倒だったけど、FedEXはアカウントがあれば先方からの発送をShip Consignee(着払い)指定できるのが便利である。今回の発送も、予定されていた燃油料上乗せも結局なく、安い料金で送ることができた。

CeresGallery に作品を見に来てくれたお客様の中に、同じくチェルシー22nd.St.のギャラリーオーナー女史がいた。作品に興味を持って下さったので、さっそく約束して翌朝画廊におじゃました。Sakiko Galleryといい、日本人の女性が経営して4年になる。亡くなられたアーティストのご主人Donald Silverstein氏の作品を扱うためにオープンされたそう。氏は長年New york TV Magazineの表紙や挿絵で有名なイラストレーターで、ファインアートとしてのペインティングも多く遺されている。単一作家のみでは画廊としての面白みに欠けるというのもあり、いずれ企画を考えて私にも声を掛けてくださるつもりであるとのお話を頂いた。
おじゃました日は、企画のひとつWilly Bo Richardsonという作家の展示会を開催中で、午後には顧客が来廊予定であるという。お客様に画廊まで足を運んでいただくことの難しさを、Sakikoさんは話されていた。
場所は違えど私も同じく長年(私単一の)画廊を経営する身でもあるので共通認識が多く、rentのことなど色々話が尽きなかった。今後Keep in touch,とうことで楽しみである。

今回は娘連れなので画廊めぐりばかりに時間を費やすわけにはいかなかったけれど、いつも回るところはできるだけチェックしてきた。25th.St.のGeorge Billis Galleryでは"City Lights"というテーマのグループ展が開催中で、30人ほどのアーティストがそれぞれの描き方で街の灯を描いていて捕らえ方が参考になる。このギャラリーは主に平面、特にリアリズムを扱うのでいつも見逃さないようにしている。

画廊歩きに疲れたら、地下鉄に乗って15th.のChelsea Marketへ。デリやチョコレート屋、アイスクリーム屋、肉屋に八百屋、魚屋にキッチン用品や家具屋まであるモールとなっている。あちこちでアート作品も飾られ人気の場所だが、ビル内のためかちょっと魚屋の匂いに支配されていてどうも落ち着かず、結局外へ出て娘待望の美味しいニューヨークのピザに舌鼓となった。

数年前までgarageとmeat shopばかりで殺伐としていたチェルシーエリアは、今完全にトレンディな一等地となった。レストランやカフェ、バー、ブティックなども充実している。しかしここはかつてのソーホーのようにブティックだらけの観光地にはならないことを期待したい。
Sakikoさんはきっぱりとおっしゃっていた。「家賃を考えるとBrooklynはやりやすいけれど、お客様はChelseaでないとなかなか来ません。」
地域のステイタスもさることながら、主な顧客の居住地からのアクセスを考えても、そうなってしまうのだろう。A.I.R.Galleryで昨年に引き続き私の墨絵が売れたけれど、買われたお客様は84th.St.,アッパーイーストサイドにお住まいだった。
しかしまぁ、こういう話題は実にチャレンジング。私が画家を辞めるときがもし来たら、好きな作家を扱う画廊を経営してみたい。・・おっと危ない。分をわきまえ、足るを知るべし。・・第一、私が筆を折るなんて考えられない!

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