2."Excuse
me."
TPOという言葉どおり、旅にも目的に応じた服装がある。何しろ旅ではよく歩く。動きやすさを重視して、ジーンズにスニーカーというひところのワンパターンに陥りやすいところだが、おまけにベルトポーチでも着けようものなら「私は日本人観光客です」と宣伝して歩いているようなものではないか。もちろん個人の自由だが、ある程度服装や態度に工夫を加えると、旅先での出会いなり、満足度が高まること請け合いだ。
5番街やソーホーのブランドブティックめぐりをしたいなら、スニーカーは脱ぎ捨てて、さりげなく良い服や靴を身に付けると、店員にも歓迎され、気持ちよく買物できるだろう。
たとえばロッククライミングやスキー等、スポーツを目的とする場合、当然スポーツ系のハードなカジュアルでかっこ良さをアップさせると、着ているウェアのメーカーの話など、その道の同胞との話が弾むことだろう。ダンスのレッスンが目的でNYを訪れる人は、東洋人にもかなりいるようだが、髪をきちんと結って背筋を伸ばして街を闊歩する姿は、人種を問わずプロフェッショナルな空気がみなぎっていて美しい。
とは言え、一見して職業が判別できないほど、NYの人々は、着たいものを好きなように着ている。人種や宗教も混沌としていて、地下鉄の中でも様々な民族衣装の人たちと乗り合わせるが、少しも違和感がない。
街を歩いていると、公園や駅などあらゆるところでパフォーマンスをする人がいる。音楽、ダンス、路上ペインティングなどさまざまだ。「踊る阿呆に観る阿呆」という感じで、いつでもオーディエンスがいる。一昨年あたりにNYのストリートで話題になった日本のガングロの女の子達のように、歩くこと自体が目的の旅というのも悪くないではないか。
私の旅の目的の大部分は画廊や美術館めぐりなので、本来ジーンズとスニーカーで充分なのだが、新たな画廊に作品のスライドを見せたり、交渉したりの場面になると、ジーンズ姿では今ひとつしまりがない。そこで、シンプルな白や黒、グレイのシャツやパンツ、夏ならサンダル、冬はブーツを履いて出かける。目指すファッションコンセプトは、「現地の人」。今や東洋系、スパニッシュ系を問わず、あらゆる人種が「現地人」となっているのがNYだ。
成功の秘訣は・・・
@ 一人で行動すること
A 背筋を伸ばしてできるだけ早く歩く
B 新しすぎない靴やバッグを身に付ける(書類や携帯電話など携えるとなお良い)
C 映画を観るように、歩く自分を外側から意識してみる。
身の安全をより確かなものにするためにも、「現地の人」になりきることはおすすめ
なのだ。興味ある分野の知識を持ち、適度な緊張感とゆとりを持って動いていると、不思議と人との良い出会いがある。画廊街を歩いていて「Excuse
me,」と、他人に道など尋ねられるようになったら―大成功である。