3.ワープできる街
「沖縄は、たとえば国際通りへ行けばほとんどの用事を済ますことができていいね」と、東京に住む人たちは言う。東京には何でも揃うが、買物などでもひとつの場所へ行った後、次の場所への移動は楽ではない。銀座に出かける日は、青山方面へ行くのはあきらめなければならない。
NYのマンハッタンは、世界一の都市ながら、北から南、その気になれば歩ける距離だ。その上、地下鉄がとても発達していて、駅は多く、どの路線も頻繁に行き来し、安くて深夜まで運行しているのでとても便利だ。道が渋滞する平日の夕方に、ダウンタウンから5分以内に8km離れたアップタウンでの待ち合わせ場所に行かなければならない、というときでも、地下鉄でなら可能だ。NYに到着してすぐに手に入れるべきものは、地下鉄マップとメトロカード(乗車券)。この街では場所から場所へ、ワープすることがができるのだ。
その日はNY3泊の最後の日。画廊のオープニングパーティーの日だ。パーティーの始まるpm4:00までの時間を有意義に使うため、充分な計画を練った。大いに歩くため、ジーンズ&スニーカーの観光客スタイルを採用。画廊と同じチェルシー地区の宿なので、戻って着替えてからでもパーティーは間に合う。まずは朝の食事を屋台のベーグルとコーヒーで済ませ、早くから開く宿の近くのネイルサロンで器用なネイリストにパーティーの服と合う色のマニキュアをしてもらう。そのあと、am9:30の開館に合わせ、アップタウンの美術館へ地下鉄でワープ。無事企画展を観て、一気にダウンタウンまでワープして、ソーホーの画廊をいくつか廻る。ソーホーにあるニューミュージアムでウィリアム・ケントリッジのフィルム・アートにしばし酔いしれ、またも地下鉄でチェルシー地区へ。昼食をピザで済ませて一時間半ほどチェルシーの画廊めぐり。pm3:40に宿へ戻って着替え、歩いて画廊のオープニングへ。パーティーで大いに盛り上がってpm6:00、欲張りにもイースト川を超えてクイーンズ地区へ一気にワープし、美術館PS1のサマーナイトショーへ、画廊へ来てくれた友人と出かけた。夜が更けるまでアーティスティックなひとときを過ごして、夕食をとり、ロングアイランド在住の友人と別れてpm10:30、一路マンハッタン行きの路線に乗りこんだ。充実した一日の余韻に浸りながら、混み合う列車内で揺られるうちに、ついウトウトと居眠りをしてしまった。ふと気が付くと、ずいぶん乗客が減っている上に、停車駅で乗り込む客が妙に東洋系ばかりだ。隣り合わせた乗客に尋ねると、私はマンハッタンとは逆向きの、フラッシングという、韓国・台湾系の人の住む町へ向かっていることが分かり、あたふたと何とか人の居そうな駅に降り立ち、薄暗いホームで延々と正しい方向行きの列車を待つ羽目になった。pm11:50無事タイムススクエア駅に降り立つと、燦然とネオン輝く真昼のような賑わいにほっとした。懲りない私はこの間抜けな事態を誰かにに知らせたくて、すぐ近くのネットカフェでさっき別れた友人と沖縄にいる夫にメールを打った後、宿に戻るとam1:30。
さすがに疲れてバタンキュー。あっという間に翌朝にワープした。